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「岐阜の自然考」をめぐる旅

見て知ることが第一歩。あふれだす身近な自然への愛情を18名の執筆者が語るエッセイ『岐阜の自然考』。その舞台をめぐる旅に出ます。

北の国から・オオバン

季節は厳冬の入口ですが、今回の自然考旅の始まりは春の盛り、4月中旬に遡ります。天然アユの遡上を見よう!と足繁く揖斐川に通っていた頃の話。懐かしいなぁ。
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サツキマス狙いの釣り人に不審に思われつつ双眼鏡で川面を眺めていますと、堰のすぐ上の流れが滞っているあたりになにか見慣れない黒い鳥の姿が。

真っ黒い体に白い額板(くちばしの上の肉板)とくちばしが目立ってます。あっこれは・・・オオバン

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図鑑では見たことがありましたが野外で実際に見るの初めてでした。それもそのはず、自然考によりますとこのオオバン、もともとは北方系の鳥で「北海道・本州中部以北の湖沼で繁殖」し、「80年代になり西日本でも観察例が増え」、「県内では93年に高山市岐阜市で越冬している個体が見られたのが最初の記録」(カッコ内は引用)なんだそうです。同じクイナ科のバンと違って、本州最西端出身のオワコマには馴染みの無い鳥。

さてそれから時は流れ、11月中旬のある日。
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タカの渡り狂想曲が一段落したので、野鳥を求めて各務原市にある木曽川水園にやってきました。ここでは年中カルガモの姿が見られますが、冬になる越冬のために渡ってくるたくさんの水鳥が手軽に観察できます。この日はカルガモの他にはコガモマガモの姿が見られました。

そしてたくさんのカモたちに混じって、
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あっ!

オオバンです。オオバンいましたー。
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おぉ~間近に見るオオバンに大興奮。この日は10羽前後が、カモたちの間を縫ってスイスイ泳ぎ回りながら採餌していました。自然考の記述の通り、ハトをひとまわり大きくしたくらいのサイズ。オオバン、やっぱいるんだねー。

こうなってくるとやはり「岐阜市オオバン」を探さないわけには行きません。長良川水系の鳥見ポイントよく知らないんだよね。困ったなぁ。
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バンって言うくらいだからあれだ、「鷭(バン)ヶ池」に行けばいいんじゃない!?

と安易に考えて突撃してみましたが、・・・・・・いません、鷭ヶ池にオオバンいません!
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ヒドリガモヨシガモオカヨシガモコガモマガモなどは見れましたがバンもオオバンも一羽もいません。これは意外。どうしましょう。ガッカリしているオワコマの前に双眼鏡を手にした紳士が現れました。なんと、水道山のタカの渡り観察で何度かご一緒したOさんではないですか・・・!Oさんは年季の入った筋金入りのナチュラリスト。早速「岐阜市オオバンが見られるところ」をお聞きしたところ、何カ所かお教えいただきました。ありがとうございます! いや~~よかった、無駄足にならなかった。ご縁って素晴らしい。

というわけで教えて頂いたポイントにやって来ました、じゃん。天王川です。
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地図を見ていただくとわかるのですが、一言で天王川といっても岐阜市内の流域はごく一部、これはとても微妙・・・!

12月初旬です。水面にはたくさんの水鳥の姿が見えます。
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とりあえずこのあたりから下流1.5kmくらいの範囲が岐阜市です。上流は北方町、下流は瑞穂市岐阜市オオバン、見つかるかな。

定番の水鳥たちの姿が見えます。このあたりで一番よく見るのは黄色いおでこの目立つヒドリガモ。あとオナガガモコガモの姿も。こちらもよく見られる水鳥ですね、
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マガモです。冬の日差しを受けて、なんと美しいエメラルド色!マガモなんて珍しくもない、と思っていましたが改めて見るとほんとうにキレイです。いきもの愛は普通種に美を見いだせるようになってからが本番・・・・・・!

写真を撮っていたら、散策中の方に「下(しも)の方にハシビロガモがいたよ」と教えて頂きました。あ、ほんとだ居ました居ました。
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大きなくちばしと真っ白な胸が目立つ、愛嬌のあるカモです。メスの水鳥ってみんな似てて識別が難しいけど、ハシビロはわかりやすいね。

上空にはダイサギが。
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この喉の膨らみと足・くちばしの長さ、優雅な羽ばたき。じーっと佇む姿より、こうやって飛んでいる方が識別が容易なオワコマ、その理由はコチラになります。

あーっと!カモたちのなかに、ピョコピョコと忙しく前後に首を振りながら移動する小振りな黒い鳥の姿が!f:id:aquatottotoday:20161216175418j:plain
これクイナだよね!?オオバン来たんじゃ、、、、、

バンでした
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おおおぉ、バンも久し振りに見ました。子どもの頃ため池などでよく見かけた馴染み深い鳥ですが、岐阜市レッドリストではなんと絶滅危惧Ⅱ類 !タマシギやサシバ、コシアカツバメと同じ稀少さとは。うちの田舎はどうなんだろう、心配です。

そしてしばらく下流に下りますと・・・あっ。
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ヒドリガモたちのなかについにその姿を見つけました。

岐阜市オオバンです。
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上流から探索を始めたのですが、割と下流の方に居ました。Wikiによると「非繁殖期には大規模な群れを形成することもある」そうですが、こちらではカモたちのように群れずに、単独で行動しているようでした。

手持ちの観察図鑑は上の写真のような泳ぐ姿しか載ってないので知らなかったのですが、オオバンの足はバンやカモと全然違ってて、カイツブリのような「弁足」と呼ばれる構造になっているそうです。カイツブリの「カイ」って「櫂」から来てるんだって。
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上の写真の左はカモ類、右側はカイツブリオオバンカイツブリの足の葉っぱ状の膜が三連になったようなゴツい足みたいです。「オオバン 弁足」でググるとかなりの衝撃画像がw

足の形だけでなく、足が付いている位置にも注目。カモの仲間が胴体の真ん中あたりに付いているのに対して、オオバンは体のかなり後方から足が出ています。面白いね。
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カモはこんな風におしりを水面に付きだして、逆立ちの状態で水中の植物を食べているのがよく見られますね。あまり深く潜ることが得意でないようです。

一方、オオバンは完全に全身水中に潜ります。
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消えた!

数秒で出てきます。あほんとだ自然考の記述通り、水草くわえてる。
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カイツブリなどは潜水するとかなり遠くまで泳いで行ってしまうので次にどこに出てくるのか予測が難しいですが、オオバンは結構すぐ浮上してくるようです。餌場の状態にもよると思いますがだいたい数秒くらい。実に撮りやすい。潜る直前「ソレッ!」という感じで一瞬空中に伸び上がる姿が可愛いです。

あ踊り食いしてるw
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木曽川水園でも、水上(水辺)の植物を食べる姿が時折見られました。食性は植物食傾向の強い雑食だって。魚や昆虫も食べるそうな。

ツマグロヒョウモンなど南の生きものが北上しているのは「温暖化」で片付くけど、もともと北方系のオオバンの分布が南下しているのはホント不思議です。生きものの世界は人間が思ってるほど単純ではないのかも。
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いよいよ本格的な水辺の鳥のシーズンです。2016年は東山動物園が休園になるなど鳥インフルエンザが全国的に猛威を振るっているため余り積極的に野鳥観察をお勧めし難い状況ですが、身近にいる鳥の種類も継続的に気をつけて見ていると、なにか気づくことがあるかもしれませんね。

 

オオバン 温暖化に反し南へ分布
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.116

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難易度:★☆☆☆☆

f:id:aquatottotoday:20160129153105p:plainコメント:木曽川水園は世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふのある河川環境楽園内にあります。水鳥が見られるのは園内西奥の下流部の池。飛来する鳥やいきものについては最寄りの自然発見館で情報発信されていますので覗いてみるのも良いでしょう。冬場にたくさんの水鳥が集まる鷭ヶ池は岐阜大学の構内にあります。伊自良川の堤防から双眼鏡で観察することができます。周辺に駐車場はありません。天王川の岐阜市エリア周辺は川沿いに遊歩道が設けてあり、水鳥を観察しながらの散策が楽しめます。
なお近年は高病原性鳥インフルエンザの流行が大きな問題となっています。野鳥観察の際の注意点はこちらのブログ(日本野鳥の会さん普及室普及教育グループ)にわかりやすくまとめてありますのでぜひご一読ください。岐阜市では、同じ場所で野鳥が複数死亡している、見慣れない野鳥が死亡しているといった不自然な状況を見かけたら、死亡した野鳥は素手で触らずご連絡ください、とのことです。詳しくはコチラ(岐阜市HP)