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「岐阜の自然考」をめぐる旅

見て知ることが第一歩。あふれだす身近な自然への愛情を18名の執筆者が語るエッセイ『岐阜の自然考』。その舞台をめぐる旅に出ます。

アイドルを探せ!・イチョウ

植物

晩秋になると一際鮮やかな黄色が街中でも人目を惹くようになるのがイチョウです。誰でも知っている身近な樹木ですが、自然考によりますと「マツやスギなどの針葉樹と同じ裸子植物」。調べてみたらイチョウはなんと「あの葉っぱ」で「針葉樹」のグループなんですね~。知りませんでした。「4億年~3億5千万年前の古生代デボン紀に発生したグループ」(自然考より)で生きた化石と言われ、1科1属1種。あちこちで見かけるのでピンときませんが、IUCNレッドリストでは野生種は絶滅危惧II類だそう。なんというか知らないことだらけで驚きます。
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知らなかったといえば「まれにオハツキイチョウと呼ばれ葉の先に実がつくものもある」(自然考より)らしい。検索してみると有名な木が何本かあり、そのうちの1本は滋賀県の醒ヶ井・了徳寺さんにあるらしい。えまじで!醒ヶ井、余裕の日帰り圏内です。レッツゴ~。

 10月中旬。遠くからでも目に入るその巨木、葉はまだ青々としていましたが地面にはたくさんの銀杏(ぎんなん)が落ちてました。踏んでしまって、帰りの車中は涙目でしたが。ほとんどの実は普通の形なのですが、よく見ると稀にこんなのが。

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これがオハツキイチョウ(御葉附イチョウ)の実のようです。おおおーホントに葉っぱの先にギンナンが付いてる・・・!何体か見つけましたがどれも歪んだ楕円のヘンな形で、葉っぱ一枚につき2~3個付いてたりします。面白いですね。境内の解説によると「化石から出土された『いちょう』に良く似ていて、銀杏が葉面上に生じるのは、花が枝や葉の一部だという学説を裏付けるもの」らしい。

さてイチョウの知識も深まったところで岐阜に戻りましょう。この項の締めくくりに「皆さんも自分なりの一本を見つけてみてはどうだろうか」(自然考より)とあります。こんな挑発を受けてはじっとしていられません。それでは「わたしの一本」を探す旅に出ましょう。
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ネット上にこんな良いものが公開されていました。その名も岐阜市の保存樹・保存樹林一覧表。保存樹とは「都市における美観風致の維持を図るために指定される樹木」のこと。岐阜市内の名だたる銘木たちに違いない。このリストにあるイチョウのうち、個人・法人の敷地にあるものを除いた11本に、市の天然記念物である2本、あとこの項の筆者いちおしの1本を加えた計14本を全部見に行って、マイ・ベスト銀杏を決めようではないですか。そしてマイベストが決まったら、黄葉の時期に改めて取材することにしましょう。うんうんなんだか楽しくなってきたよ・・・!

というわけでまず最初に筆者の方いちおしの石原・醍醐寺に。口絵にカラーで載っていないのが残念なくらい見事な大イチョウです。実際に見ればさぞかし・・・・・・f:id:aquatottotoday:20161203163527j:plain
・・・って、あーーーーーーーーーっと!

伐られていました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
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この日はちょうど護摩供養が開かれていました。信徒の方にお伺いしてみたところ、落葉時の掃除があまりに大変でこうなったようです。移植する案もあったそうですが希望者が無く断念、数年前に惜しまれつつ上部を伐採された模様です。確かに、オワコマの近所の神社にもイチョウの巨木がありますが、周囲の家々は毎年落葉の時期は大変そうです。

さてでは気を取り直して。岐阜駅・金華山周辺に集中する名イチョウはこれで回っちゃいましょう。岐阜市が運営する「ぎふ・まちなかレンタサイクル」。
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一日100円で、返却は市内7ヵ所にあるお好きなレンタサイクルポートへ。観光にはこれなかなか便利よ。

2ヵ所目は岐阜の市街地のどまんなか、保存樹指定No.172神田町・円徳寺です。幹周2.1m、樹高20m。基本的にタテ構図の写真は撮らない主義ですが、被写体が被写体だけに今回はタテで。

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おぉー立派です。街中にあって、そこにあるだけで静謐な雰囲気を醸し出し、都会の喧噪を忘れさせるような聖域感を演出しています。放射状に伸びる枝には勢いがあり、非の打ち所がないほどよく整った美しい樹形に心奪われます。なんだろうこの気持ち。大イチョウ、、、、やばくね!?

3ヵ所目は市の天然記念物として有名な大門町醍醐寺。幹周5.9m、樹高30mの威容!これはスゴい、完全に規格外!道路を渡って反対側からあおらないとフレームに入りきらないじゃないの!!
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境内の解説によりますと樹齢は約五百年。濃尾大震災の際、この辺り一円を焼き尽くした大火災から寺を防護したことから「火伏せの大銀杏」と呼ばれているそう。自然考にも記述がありますが、イチョウは燃えにくい性質のため、防火樹として多くの寺社仏閣に植えられているそうです。

見るものを圧倒する威容の中にも、ふと見上げるとこんな光景が。
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ヒワイな木でお馴染み・ノキシノブや、他の植物がその幹に着生しています。男気の中にも包容力を感じさせる、文句なしに素晴らしい一本。

4ヵ所目は円龍寺のすぐお隣り、大門町・上宮寺。幹周4.15m、樹高24m。こちらも保存樹ではなく、岐阜市の天然記念物。
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すんなりした幹の立ち方が清々しい一本。枝振りや樹形も素敵。周囲の景観がイチョウの清廉さを更に引き立てていてズルいね。

そういえばイチョウの幹からこういうのぶら下がってるの見たことありません?
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前から「なんだろう?」と気になっていたのですが、調べて見るとこれは気根とか乳根(ちちね)と呼ばれるものだそう。形が女性の乳房を連想させることから、安産や子育ての願掛け対象となっているようです。この乳根、学術的にはどういう役割を持っているのか、いまだにはっきりしていない模様。つくづく、イチョウって不思議な木ですね。

5ヵ所目、No.51中大桑町・浄安寺。幹周2m、樹高15m。
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若々しく奔放で、爽やかな一本。幹を撮りたかったので背景が墓地の構図になってますが、参道から本堂の大甍をバックに見るとなかなか風情があります。落葉の頃は瓦の黒とイチョウの黄色のコントラストが見事に違いない。

6ヵ所目、No126・127則武・新田天満宮。こちらは2本になります。左(No126)幹周2.45m、樹高26m。右(No127)幹周2.35m、樹高31m。左の方が高く見えますね、計測後に成長したのかも?
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これは素晴らしい、寄り添う双子美人さん!2本とも雄株のようですが見た目は女性的なので「美人」と呼びたくなります。樹高は円龍寺と同じくらいあるのにすっきりした枝振りのため、威圧感がありません。伸びやかで、非常に清々しい。

7ヵ所目、No.5長良鵜飼屋・神明神社。幹周1.7m、樹高16m。
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金華山に臨む、長良川のほとりにあります。コンパクトながらも存在感があって愛らしい1本。樹形も丸くこんもりとよく整っています。

8ヵ所目、No.123加納八幡町・八幡神社。幹周3.2m、樹高13m。
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あーちょっとこれは元気がないですね。幹もかなり傷んでいます。幹周の割に樹高が低いので、指定を受ける以前に上の方を伐採されているのかもしれません。往事はどんな姿だったんでしょうね。

さて自転車を降りましてここからは車で。9ヵ所目はNo.35・36長良古津・白山神社です。銘板が建物に付いていたので判然としませんが、幹周3.7m、樹高20mのNo.35と、幹周2.7m、樹高15mのNo.36の2本。f:id:aquatottotoday:20161203163539j:plain
これはかなり見とれてしまいました!イチョウの巨木が2本並ぶと魅力がいや増しますなぁ。そして脳内でなぜか擬人化されてしまう謎現象。こちらも雄株2本のようですが、則武・新田天満宮とは対照的に非常に男性的なイメージです。立ち位置にもよるんだろうか。木としてはとても良い。けど周囲の建物が残念。

10ヵ所目、No.280柳津町本郷・光沢寺。幹周2.75m、樹高16.6m。
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こちらは非常に個性的な1本!「これぞ雌株の中の雌株」と言いたくなるほどの素晴らしい枝の広がりで包容力を感じます。上の方の結実がとにかくスゴい!豊饒の女神と呼びたくなるような母性オーラを発しています。かなり落葉してしまっているのが惜しい。もう少し早い時期に見たかった1本です。


まだまだ行きますよ11ヵ所目、No.105藪田・藪田神社。幹周2.5m、樹高17m。
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あいいですねーこの天に向かって燃え立つような樹勢。雌株ですが、周囲のビルに負けず、威風堂々といった趣き。西日を一杯に受けて、実に絵になってました。

12ヵ所目、No.281柳津町高桑・高桑八幡神社。こちらは複数の樹木で一括指定で、イチョウ単体の幹周・樹高は不明。
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住宅街の中の深閑な一画なのですが、ちょうど夕暮れ時に訪れたこともあり、非常に幻想的かつ神秘的な雰囲気を醸し出していました。この写真に写っているイチョウは枝振りが雌株っぽいのですが結実が無く、雄株のようです。神社のイチョウとしては個性的なタイプで、今後が楽しみ。

13ヵ所目、場所の特定に難儀しましたが、見つけました。No88旦島・神明神社。幹周4.45m、樹高40m!?これは大きい!
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圧巻の幹周りです。神社の看板には樹齢数百年とありますが実に若々しく力強い。驚くべき安定感です。赤い鳥居と並んだ佇まいも郷愁を誘って良いですねぇ。儚い人の世の幾多の悲喜こもごもを見守ってきたんだろうなぁ、そんな気持ちがしみじみと浮かんできます。銘木!

最後に飛び切り個性的な1本をご紹介しましょう。14ヵ所目。No.174下尻毛・春日神社。幹周2.6m、樹高22m。
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とにかく見てください、このユーモラスな姿!生命力が横溢しているかのように、根元や幹からから子株が吹き出しています。剪定しないとこうなるのか不明なのですが、見た瞬間「こ、これは・・・!」と心揺さぶられました。そしてそんな株元とは裏腹に、枝を伸ばすよりもとにかく上へ上へ、と樹高を上げることに熱心な様子や、居並ぶ樹木たちと語らっているかのような佇まいがなんとも・・・人間臭い。実に印象的な1本でした。

さて岐阜市の名だたる名イチョウをコンプリートしてるうちに、街のイチョウたちも色づいてきました。
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自然考にも登場する、雄日ヶ丘公園。ぐるっとイチョウ並木で囲まれています。青空の下、黄金色に燃え立つ黄葉が素晴らしい!

ではここで足元を見てみましょう。ウワーッ夥しい数の銀杏(ぎんなん)!!地面が見えませんw
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銀杏を拾いにやってこられた方々の姿もチラホラと。オワコマも食べる銀杏は大好きです。イチョウの属名は「Ginkgo」だそうですが、これ「銀杏(ぎんきょう)」からきてるらしい。初めてヨーロッパに紹介した人が「Ginkyo」を「Ginkgo」ってミスっちゃったのに端を発してるようです。Ginkgo・・・なんて発音するんだろうねw

こちらは岐阜県庁前。キレイですねぇ。
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街路樹としては「落果による交通傷害などを嫌い、雄株のみが植えられる」(自然考より)そうです。なるほどねぇ。秋の風物詩・御堂筋の銀杏並木もその異臭が嫌われて、徐々に雄株に植え替えられているそうです。

さて秋も去りゆく気配の師走です。それでは満を持して発表しましょう、オワコマのマイ・ベスト銀杏はこちらになります。
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押さえ切れない、この胸の高鳴り・・・・・・!

大門町・上宮寺のイチョウです。
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おぉー見事な黄葉!雲ひとつ無い青空に輝いています。思った通り素晴らしい!このスンナリと素直に伸びた幹と、控えめながらも女性らしさを主張する整った枝振りに惚れました。あとやはり周辺の景観は重要。本堂や鐘楼、寺門といった建造物としっとりと馴染んでいる様に、なんともいえない心地よさを感じます。

最後はすっかりイチョウ評論家のようになってしまいました。樋を詰まらせるほどの大量な落葉や強烈な銀杏臭で厄介者として見る向きもあるようですが、それも含めてやはりイチョウの黄葉は日本の秋の風物詩。
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みなさんもお気に入りの1本見つけてくださいね~♪

 

秋を彩るイチョウ 神社や寺の防火樹に
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.65

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難易度:★☆☆☆☆

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滋賀県醒ヶ井・了徳寺の大イチョウは国の天然記念物です。醒ヶ井宿のまんなかあたりの木彫美術館横に観光客用の無料駐車場がありますので、お車でお越しの際はそちらを。上宮寺の黄葉は市内の他の大イチョウに比べるとかなり遅いようです。2016年の見頃のとき(12月初旬)には隣りの円龍寺の方はほぼ落葉しており、2本の黄葉コラボを見るのは難しいかも。岐阜市内の観光に便利な「ぎふ・まちなかレンタサイクル」についてはこちら(岐阜市ホームページ)を。一回百円。何度も利用される方は、初回に会員カードを作っておくと申込の際の手間が省けて便利でしょう。