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「岐阜の自然考」をめぐる旅

見て知ることが第一歩。あふれだす身近な自然への愛情を18名の執筆者が語るエッセイ『岐阜の自然考』。その舞台をめぐる旅に出ます。

トリツカレ記・タカの渡り

最初に告白しますが今回はヤラれました、どハマリです。完全に取材の域を超えて通うことになりました。そのテーマとはズバリ、「タカの渡り」。舞台は「岐阜市の真ん中に位置する金華山の尾根続き」(自然考より)にある上加納山・通称「水道山」の展望台です。
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自然考によりますと、タカの渡りが始まる9月中旬になると「タカの渡りを観察しようと毎日数人が展望台に集まり、休日ともなると(中略)数十人の人でにぎわう」とあります。カモやツバメのように渡りをするタカ類がいる、というのは知っていたのですがそれが岐阜市のど真ん中で見れるとは、自然考を読むまで全然知りませんでした。ウワサに聞くタカ柱も見てみたいし、これは取材せねばとリストアップ。まあ1、2回行ってみて、観察してる方にお話を伺えば記事になるかな。最初はそんな風に考えていたのでした。。。。。

まだ残暑の厳しい9月初旬(正確には9/9)、夜景の名所として甘酸っぱい思い出薫る展望台に来てみました。そこには空を見つめる人々の姿が。あっ!タカの渡りを観察をされてる方たちだ!

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ちょっとドキドキしながら自然考のアドバイス通り「今日はどうですか?」とお聞きしてみると、みなさん大変親切に色々と教えてくださいます。こちらでは例年、有志のみなさんが渡るタカの数をカウントしておられるそうです。

これ(写真下)とても重要。展望台から見える目印の呼び方ガイドです。サシバ・ハチクマ・ノスリなどのタカたちは、金華山付近では北東方面から南西へ渡って行くので、観察者はこの方向に目を凝らします。
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飛来するタカを発見したら、どこに現れたかを周囲の観察者に伝えるのですが、その際の目印になります。

例えばこちら(白い矢印のとこ)でしたら「赤白鉄塔11時に1羽」です。
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初めは黒い点にしか見えませんが、接近するにつれてシルエットや羽根の模様で種が識別できます。金華山を越えて南~南西へ飛んで行ったものを「渡り」として、種ごとにカウントしていきます。しかし熟練観察者のみなさんはホントに目が良くてビックリです。双眼鏡で見てもケシ粒くらいの鳥影を肉眼で見つけられる方がいらっしゃって、目の悪いオワコマなんかは度肝を抜かれます。

これいいですね、観察者の方が持っておられた「ひとめでわかるワシタカ識別シート」。
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渡るタカといっても種類はいろいろ。こちらのシートでは、大きさの違いもよくわかりますね。

それでは水道山周辺で見られるタカの仲間を紹介しましょう。観察初心者がまず引っかかるのがトビです。長良川周辺にたくさん見られるトビは留鳥。これはカウントしません。
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特徴は「バチ型の尾羽」。真ん中がヘコんでいますね。あと見慣れてくると出現場所とか、飛び方でもなんとなくそれとわかってきます。観察者の方いわく「正面から見たときに、翼がなんかダラ~ッとしてるんだよね~」。

自然考で「渡っていくタカの中で最も有名」と紹介されているのがこちら、サシバです。
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スマートな翼がとても美しいですね!「夏鳥として日本に飛来し、子育てをした後、東南アジアの島々に渡って冬を過ごす」(自然考より)そうです。渡りで通過する鳥は希少種の選定範囲には含まれないそうですが、サシバは百々ヶ峰でわずかに繁殖しているそうなので、岐阜市では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。水道山では9月から10月の初旬にかけて一番多く見られるそうです。 

ハヤブサが現れました。なにかを捕食した直後では、とのこと。ほんとだー喉がプックリしていますね。そういえば以前、金華山中腹の東坂登山道から見えるガケに、ハヤブサが巣をかけているのを見たことがあります。
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写真は撮れませんでしたが、ハヤブサよりひとまわり小さいチゴハヤブサが渡っていくのも見られました。

ミサゴです。こちらもトビと同じく留鳥。大きいー。
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魚を狩って食べるタカです。そういえばオスプレイってミサゴだったよね。フワフワした白い頭がちょっと可愛らしい。

ハチクマが現れました!わーハチクマってこれか~。NHKダーウィンが来た」でスズメバチの巣を襲ってる姿が衝撃だったよね~
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ハチクマは他のタカに比べて首が長いのが特徴だそう。サギの識別のときもそうだったけど、「ここがこうこうだからこの種」ってみんなで談義するのを聞いていると勉強になります。そして楽しい。

ハチクマもサシバと同じ頃に出現のピークを迎えるようです。
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多い日には一日数百羽見られるとか。スゴイですねー!そんな日に当たりたくて観察者は日ごと山を登り、晴れているのに山に行けない日は空を見上げて溜息をつくのです。

タカ以外にも色々な鳥が展望台付近に現れ、渡りの合間に観察者を楽しませてくれます。こちらはサンショウクイ岐阜市のシンポジウムで講師の大塚之稔さん(自然考のタカの項の執筆者)が話された名前の由来「山椒を食べたからピリリ・ピリリ(山椒は小粒でピリリと辛い)と鳴いている」のエピソードに会場が沸いたことを思い出します。
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昔はたくさんいたというサンショウクイ岐阜市では絶滅危惧Ⅰ類 。このときは観察者全員でカメラを持って殺到しました!

ウワァッ!ヒヨドリの大群だー!
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ヒヨドリも渡るんですね。この他にもカケスやアオバトメジロエナガが見られました。ハリオアマツバメなども見られるそうですよ!

鳥以外にも色々な生き物が目を和ませてくれます。
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セイボウ(蜂の一種)の仲間。イワタセイボウかな?(要確認)

タカの渡りの時期にはアサギマダラもたくさん見られます。あ、展望台そばに植栽されたフジバカマにとまった。
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わーアサギマダラ撮れた!うれしいー。ドライブウェイを車で走っていると時折見かけるのですが、近くで見ると思ったより大きくて感動でした。

さて10月に入りますとサシバ・ハチクマに替わって、ノスリが渡りの主役になります。
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ノスリも多い日には3ケタが金華山上空を通過していくそう。

オワコマが渡りタカの中でいちばん魅了されたのがこのノスリです。腹巻きと翼の斑、全体的にまるっこいシルエットが目印。
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青空をバックに、旋回するノスリが反転するたび太陽光を反射してキラリと白く輝く姿は、息を飲む美しさ。本当に惚れ惚れします。

オオタカが現れました。
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オオタカも渡るんですね。岐阜市の自然環境基礎調査によりますと、百々ヶ峰や金華山、北部の山林で少数が繁殖しているそうです。ちなみにオオタカは「蒼鷹(アオタカ)」がなまったものらしくて、実際にはハシボソガラスと同じくらいの大きさだそうな。知らんかった。

オオタカと一緒に、ツミも現れました。
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ハトより小さい可璘なタカです。これ同じ高度です、オオタカとの大きさの違いがよくわかります。こんな小さい体で果敢に渡っていくんですね~

あっミニ・タカ柱ができた!トビがほとんどだけどノスリも数羽混じっているようです。
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上昇気流を見つけたタカは旋回しながら高度を上げていくのですが、たくさんのタカが集まって旋回し始めると竜巻のようになり、この状態を「タカ柱」と呼びます。10羽くらいでも、集まって回り出すと壮観。これが数十羽とか百羽だったら・・・スゴいだろうなー!

日差しを浴びながら、くるくる回るノスリたち。実に優雅です。
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ノスリたちからはどんな風に地上が見えてるんでしょうね~。

十分に高度を取ったタカたちは、一気に滑空して見る見る展望台から遠ざかっていきます。越冬地は南西諸島や東南アジアの島々。旅はまだまだ続きます。頑張るんだよー。
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何気なく生活している街の遙か上空で、タカたちの壮大な旅が黙々と、延々と続けられていたことを知って胸熱でした。みなさんのお住まいの街の上空にも渡りのルートがあるかもしれません。タカ見の山が近場にある幸運な方は、秋晴れの日、双眼鏡を持ってぜひお出かけください。ひょっとしたら中毒になってしまうかも知れませんが^^

水道山の展望台 タカの渡り、上空は壮観
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.104

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難易度:★☆☆☆☆

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展望台は上加納山(かみかのうざん)あるいは水道山と呼ばれる金華山の尾根続きの山の山頂にあります。麓の「柏森(かしもり)公園」から遊歩道で徒歩20分くらい。車の場合は金華山ドライブウェイを利用します。金華山ドライブウェイの通行は7:00~21:00、土日祝日は展望台から岐阜公園側へは進入禁止(岩戸公園方面のみ)になります。登山者の方が多いので、走行はお気をつけ下さい。展望台は駐車場・トイレありです。タカの出現は午前中が頻度高めですが、高度が高過ぎて見えにくかったりルートが外れてたりすることもありますのでその日の運次第。渡りのリアルタイムのカウント情報はタカの渡り全国ネットワークさんのHPで見ることができますのでお出かけの際のご参考に。