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「岐阜の自然考」をめぐる旅

見て知ることが第一歩。あふれだす身近な自然への愛情を18名の執筆者が語るエッセイ『岐阜の自然考』。その舞台をめぐる旅に出ます。

ハロー!ワールド・ニホンイシガメ

 キャー!こんなところにカメがいるー!!f:id:aquatottotoday:20160905164406j:plain
ミュ、ミュータント・ニン・・・・・・

ごめんなさいこれフィギュアです。カスミサンショウウオの項でご紹介した岐阜大学の淡水生物園の看板を飾るニホンイシガメ。よくできてますね。

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そうこちら淡水生物園ではカスミサンショウウオと共に、ニホンイシガメの保護増殖が進められています。2011年に始まって、今年で6回目の産卵シーズンがやってきました。カスミの取材の折、淡水生物園を運営されている応用生物科学部の楠田先生から「ニホンイシガメの取材もよかったらどうぞ」とのありがたいお申し出を頂きました。というわけで今回の自然考旅はこちら、ニホンイシガメの生息域外保全です。

ところで一般の方でニホンイシガメを野外で見たことあるっていう人、ほとんどいないんじゃな~い?かくいうオワコマも、川で見たのは実は一度だけ。しかも詳しい人に「確実に居る」ポイントを案内して貰ってのこと。黒目がちのクリッとしたお目々が超絶カワイイ、日本の在来ガメです。
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こんなにかわいいニホンイシガメですが、環境省岐阜市ともにレッドリストでは準絶滅危惧種と急速にその数を減らしているようです。2010年から2013年に岐阜大学周辺で行われた調査によると、約1000匹捕獲したカメの中でニホンイシガメは23匹、2%だったそうです。えぇっ、たったの「2%」!?前戯に5分以上かける日本人男性の割合より少ないんじゃない!?※個人の感想です

残りのうち約30%はクサガメとスッポン、後は全てこちら。ご存じ外来種ミシシッピアカミミガメ。構内のプールにもプカプカと浮かんでました。
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過去、楠田先生が試しに学生さんにニホンイシガメの写真を見せて種名を尋ねると、「ミドリガメミシシッピアカミミガメの流通名)」との回答が断トツだったそうな。あとポケモンの名前とか(笑) それくらい、アカミミが在来種であるニホンイシガメを押して幅を利かせている状況があります。

構内の「ばんが池」にはアカミミ捕獲用のトラップも見られました。
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前述の調査によりますと捕獲されたアカミミのメスはオスの3倍いたそう。それも急激な増殖の要因のひとつのようです。

アカミミだけでなく、岐大構内ではたくさんの外来生物が見られるそうです。そういえば昨年(2015年)には「大学にライギョ落ちてた」とかツイートされて話題になってましたね。
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そういった状況をなんとかすべく、2009年の岐阜大学「環境ユニバーシティ宣言」が契機となって、「日本固有のニホンイシガメを岐阜からも失わないために」(自然考より)、域外保全の拠点となる「淡水生物園」が整備されたそうです。「淡水生物園ができるまで」はコチラ

さてニホンイシガメの孵化は例年9月上旬。今年(2016年)は8/29に最初の幼体発見、とのご連絡を楠田先生より頂きました。早い!早いよまだ夏休みじゃん!!すぐにでも飛んで行きたかったのですが叶わず、新学期早々の9/2に淡水生物園を訪ねました。孵化日に当たれば容易に子ガメを見れるとのこと。いやー絶対見たいなー。見れるかなー。
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おぉ木道が新しくなっている\(^o^)/

楠田先生が持って来てくださいました。これまでに発見・回収された幼体たちです。すでに14匹も!!(発見は15匹、うち1匹は死体)
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過去最高の発見数(22匹)だった2014年が9/3の時点で4匹だったそうなので、今年はかなりのハイペースで孵化しているようです。

幼体たち元気です。
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かわいいですねぇ。

孵化した幼体はこのような水場の浅瀬に潜んでいることが多いそうです。
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うーん。居ないなー。この日のお昼に2匹発見されたそうなので今日はもう見つからないかも。

と思いつつふと水場を眺めていますと。
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んっ、排水口のあたりでなにかがモゾモゾ動いている。ちょっ、せ先生これは・・・!

おぉぉぉ幼体発見です!し、信じられない自分自身が見つけてしまうとは。
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学生さんでもなかなか見つけられないそうなので、なんだか申し訳ないです。。

孵化後の産卵巣を掘ると、残された卵殻で1クラッチ(産卵1回分)の孵化個体数がわかるそうです。
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砂場の、ちょっとへこんでるところがそうらしい。えー!?見た目では全然わからないんだけど!?楠田先生次々掘り当てます。カメのたまごの殻って初めて見ました。鳥類と全然違うんですね。柔らかくてペコペコしてました。

もう1匹。楠田先生が見つけました。
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脱出し損なって少し弱っていたようです。見つかってよかったね。

この後ハプニングが。
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楠田先生:「これはヤバいものを掘ってしまった・・・・・・」

なんということでしょう、今まさに孵化の真っ最中の幼体たちを見つけてしまいました・・・!
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うわわわわわわす、すごい!カメの孵化をライブで見るのは初めてです!幼体たちには申し訳ないけどオワコマ大興奮。

動画でドーゾ。

ハローワールド。ようこそ世界へ。

生まれたての子ガメってこんな感じです。おなかにまだ卵黄がくっついてます。
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なっ、なるほどー!カメにもちゃんと「おへそ」があるんですね。卵黄はこの後数日でちゃんと吸収され、無事成長しているようです。よかったよかった。

この産卵巣からは8匹が発見されました。1クラッチで6個くらいが平均的だそうですので、これはなかなか多い。
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1匹目の幼体と比べて甲羅のフチが丸まってるのがわかります。卵のなかにいるときはこんな風なんですね!この形状で、孵化からどれくらい経っているのかだいたい分かるようです。

当初発見できるかな~と心配していた幼体を10匹も見ることができてホクホク。探索は一旦終了して、区画水槽の方を見学しました。こちらにはイシガメの他にクサガメや、駆除個体のアカミミなどが研究用に飼育されています。
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回収された幼体は翌年の初夏まで室内の水槽で飼育され、この網のかかっている水槽に入ります。その後カラスなどの外敵から逃げられるくらいのサイズにまで成長したら、繁殖池の方に晴れて帰還するそうです。

これは面白い。カメの個体標識方法です。あらかじめ縁甲板に数字を割り当てておいて、数字の和が個体ナンバーになるように穴を開けておくんだそうです。
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なるほど~!両生類なんかと違って甲羅のある生きものは便利ですね。

たとえばこちらはこんな感じで、
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1000+200+40+5+1=1246、つまりNo.1246さんというわけ。

ちなみに年齢は腹甲の年輪を数えるとわかるそうです。
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この個体は3歳だそう。え、3歳?3歳といったらキミは・・・

ひょっとしてこの時の子か・・・・・・!
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オワコマが初めて淡水生物園を訪れた日、カスミサンショウウオとニホンイシガメの放流会が行われたのです。このときはまだ繁殖池の方に放流してたのですね。いやしかし元気に育ってくれていてお母さんホント嬉しい。

さて楠田先生、ご帰宅時も再度探索されるとのことで、せっかくなので夜の部も見学させていただきました。
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見つかるかなー。

あっ、成体!
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昼間は人の気配がすると完全に潜ってしまってほぼ姿が見えなかった繁殖池の成体ですが、夜は割りとうっかりしてるみたいです。

楠田先生、幼体1匹発見!
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落ち葉の下に潜んでいたそうです。さすがー!スゴイです!先生まさか仕込みじゃないですよね?楠田先生:「そんなメンドクサイことしません失礼しました

淡水生物園、飼育動物以外にも生物も進入してくるようで、夜はカエルによく遭遇します。トノサマガエルと、ヌマガエル、ニホンアマの他、あぁやっぱり居るんだ招かれざる客。
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特定外来生物ウシガエルです。構内の水路でも盛んに鳴いています。カメ博士こと愛知学泉大学の矢部隆教授によりますと、ウシガエルの成体もカメの幼体を捕食しているのが目撃されているそうです。他にニホンイシガメの幼体を捕食する外来種はアライグマやライギョオオクチバスになんと、アメリカザリガニまで!みんな昔は日本に居なかった生きもの。突然こんなに外敵が増えてしまったら、ニホンイシガメだってどうしようもありませんよね。

外敵に加えて、ニホンイシガメを駆逐する勢いのアカミミの増殖。アライグマもそうですが、こちらはもともとは人が飼っていたペットです。カメの幼体は本当に可愛らしくて連れて帰りたくなるのもわかりますが、最後まで愛情を持って可愛がってあげてください。「ミシシッピアカミミガメが悪いのではない。私たち人間が引き起こした問題なのだ」(自然考より)。
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取材当日の発見個体数は14匹、淡水生物園始まって以来の大記録になりました。「2016年は過去最多を更新中」とのことで、岐大のニホンイシガメは年々順調に増え続けているようです。素晴らしい!こうした取り組みを知ってもらうことによって、ニホンイシガメだけでなく、すべての生きものにとってより良い世界になるといいなぁと思います。

「不自然」な水辺の生物
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.33
人が壊すカメの生態系
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.50
増殖する外来種カメ 岐阜大構内、駆除へ本腰
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.64
ニホンイシガメ 岐阜大に保護増殖池造る
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.83
ニホンイシガメ 保護増殖へ8匹が孵化
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.96
ニホンイシガメ 希少種の卵「守りたい」
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.180

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難易度:★★★★☆

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淡水生物園は岐阜大学構内にあります。ニホンイシガメの孵化時期は8月末~9月いっぱい。外部者の入構には許可が要りますので、見学したい方は応用生物科学部・楠田哲士准教授にご連絡(メール推奨)を。アクア・トトぎふでは3F長良川上流フロアにて、ニホンイシガメの成体を常時観察することができます。