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「岐阜の自然考」をめぐる旅

見て知ることが第一歩。あふれだす身近な自然への愛情を18名の執筆者が語るエッセイ『岐阜の自然考』。その舞台をめぐる旅に出ます。

試練を超えて・アユの遡上

この地に来て以来、毎年見に行こう見に行こうと思いながらいままで果たせていなかったものがあります。そう、それは小牧の田縣神社豊年祭・・・ではなく(ないのか)、「アユの遡上」。
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のっけから飛ばしすぎですかね、読者離れが心配ですね。自然考によると「天然鮎は2月末から3月に海から川に遡上を開始する。川に遡上を始めるのは全長7センチくらいの若魚で、6月ごろまで遡上が続く」そうです。この近辺で簡単に遡上を観察することができるのは、なんといっても長良川河口堰の魚道観察室です。それでは行ってみましょう。

 

時は4月下旬、平たく言うと釣り見学の折です。河口堰左岸には学習施設「アクアプラザながら」があります。長良川のこと、河口堰のことをもっともっと知ってもらいたい。これが「アクアプラザながら」のテーマ。ではちょっと寄ってみましょう。
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平日とあってガランとしてました。管理人の方はとても気さく。

フロアの一角にモニターがあり、アユの大群が河口堰をぐんぐん上っていく映像が映し出されています。へぇ~すごいな~こんなに上ってくるときもあるんだ~と感心して眺めてると管理人さん曰く「これライブ映像ですよ^^」とのこと。な、なんだってー!!!!
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のんびり展示を見ている場合ではありません、現場に急行です。

魚道観察室の入口。すぐそばには鯉のぼりならぬ「鮎のぼり」がはためいてました。
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逸る心を抑えつつ階段を下り、暗幕をめくってみますと。

あーっと!ご覧ください遡上するアユの群れです!
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正真正銘・100%天然のアユ、いわゆる「アユ(天然遡上)」たちです。スライドゲート(右の黒い構造物)の下流に少し溜まって、みんなで一斉に上り始めます。

流れに逆らって、元気いっぱいグングン上っていきます。すごいすごい!大興奮です!
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ゲートの幅が25cmだそうですので、体長7~8cmくらいかなぁ?こんなに小さいのにすごいパワーだ!

一難去ってまた一難。無事ゲートを乗り越えたと思ったその先には、遡上アユの捕食を企むでっかいスズキが待ち構えています。
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次々と捕食される稚アユたちと、それを大幅に上回る数の、難を逃れた仲間たち。生命のドラマだ!ある程度数が揃ってから一斉にゲートを越えることで、捕食のリスクが下がっているのかもしれません。このあと超でっかいニゴイも現れました。ゲートの下流にはナマズ、そして魚道の上にはカワウも虎視眈々と。この海からの贈り物の僥倖にあずかろうと、みんなで待ち構えているようです。

アユだけでなく、この魚道観察室からはたくさんの生き物が観察できます。この日は他にヨシノボリの仲間や小さなヌマチチブ、モクズガニ、ヒメタニシやテナガエビなんかも見られました。
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モクズガニのこどもがたくさんいました。このゲート、水位調節のため上下に動くらしいんだけど、アンダーフロー状態にもできるのかな?

ちなみにアクアプラザに配信されている映像のカメラはここ。アクアプラザからリモートコントロールできるようです。どちらか一方は、HPの魚道ライブ映像用かな。
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人気のない場所で恋人と二人きりになるとイチャイチャしたくなるタイプの方はお気をつけください、全世界にリアルタイム配信で映像大公開です。

初めて見るアユの遡上に大興奮した後はせっかくなので徒歩で右岸に渡ってみました。無料のレンタルサイクルもあるようです。河口堰上の道路から水面まで結構な高さ、そのうえ強風。脇目もふらず、道の真ん中を歩くオワコマ(極端に高所恐怖症)、嫌な汗をかきながらも無事右岸に到着です。
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あっ、ちょっとこれ!この水路見覚えがある!

アユのふ化事業で受精卵をふ化させてるのこの水路だ!
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ふ化事業とは、秋にアユの親魚から採卵して、受精した卵が発眼卵まで成長した時点でふ化用水路に運搬し、ふ化させて河口堰の下流に流下させるものです。河口堰によって長良川生まれの仔魚たちが伊勢湾まで到達しにくくなったことの代償みたいな感じでしょうか(違ってたらスミマセン)。前からどこだろ~?と思ってたんですけど堰右岸だったんですね。このシンポジウムの時にふ化事業への感想を求められた川漁師・大橋亮一さんの言葉が忘れられません。

さてこのふ化事業とは別に、長良川ではアユの人工種苗の放流も行われています。自然考によりますと「初期に遡上し始めた鮎は(5月から6月の鮎釣り解禁のシーズンには)友釣りの対象になるサイズまで育っているが、それだけでは足りないので、大きめの種苗の放流が行われる」とのこと(カッコ内はオワコマ註)。長良川のアユ種苗の生産を行っているのはこちら、財団法人岐阜県魚苗センターだそうです。関市と美濃市にあるようです。こちらは美濃市の事業所。

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アユの種苗育成に関しては、こちらの動画「鮎の誕生物語」にとてもよくまとめられています。圧巻はなんと言っても開始45秒付近の「採精」。えぇっアユの精液ってこんなに濃いんだ!驚きです。これはわたしがいままでに見た中でも一、二を争う濃さ。

たまたま通りかかっただけなので、今回は突撃無し。外からパチリ。
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あーっと!建物の壁面に、卵のゆりかごになる「あのシュロ」がたっくさん!

それでは「アユ(天然遡上)」の遡上(ややこしいな)に続きまして、アユ漁解禁に先立って放流される人工種苗アユを見てみることにいたしましょう。「長良川にアユ放流」のニュースを聞いて、長良川中央漁協さんに電話。「アユの放流って見学できますか~?」とお聞きしてみたところ、「いいですよ~」と快諾いただきました。ありがとうございます!放流場所はいろいろあるようですが、今回は小瀬鵜飼で有名な関市小瀬・鮎之背(あいのせ)橋直下。小瀬鵜飼の案内所があるところです。

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アユはこんな感じのトラックでやって来ます。

放流が始まる前、「荷台に上がっていいよ」と声をかけて頂きました。水槽のカバーを開けると、ウワー!凄い数のアユ!
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本日は100kg、1万匹の放流だそう。

放流はこんな感じで行われます。実際に見るまで放流と言えばこんな感じだろうと漠然と思っていたのですがまあそんなわけはなく。
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ホースでガンガン流していきます。

見る見るうちに長良川に散っていくアユたち。
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初めて泳ぎ出すホンモノの川の流れはどんな感じなんでしょうね♪

あらら。なんか渋滞してる。
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大パニック。

100kg、1万匹の放流にかかった時間はわずか3分!あっという間でした。「すくってもいいよ」と言われたので、持参したタモでホースから飛び出してくるアユを捕獲。大きいですね!10cm以上ありそう。
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河口堰左岸魚道で2016年に初めてアユの遡上が確認されたのが2/15。やはり約7cmだったそうです(河口堰管理所HPより)。その頃上ってきたアユだと、友釣り解禁の頃には、自然考に書かれている通りこの放流アユたちに負けないくらい大きく育ってるんでしょうかね~。

さて川と共に生きてきた人たちの話を講演などでお聞きする機会がよくあるのですが、昔の人の証言で頻繁に耳にするのが「川が真っ黒になるほどの稚アユの群れ」ということばです。先日安曇川にウグイを見に行ったとき、偶然その状態が見れました。
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見て下さい簀(す)の下流、遡上するウグイとアユで真っ黒です!アユたちは画面右上のカットリグチ(ハシゴがかかってるとこ)に誘導され、生け簀に落とされます。ちなみにこの安曇川やな漁、全国漁港漁業協会の「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」に選ばれてます。これは堰き止められてるからこうなってるんでしょうけど、昔の川って普通の本流でもこんなスゴい光景が見られたんですかね~!ゾクゾクしますね♪

むむむ。河口堰にしつらえられた観察窓とか人工種苗のアユとかじゃなくて、「アユ(天然遡上)」の遡上が見たくなってきました。え、ややこしいですか?天然の定義についてはこのへんで。よく新聞の一面とかで初夏の風物詩っぽくジャンプする稚アユの写真あるじゃないですか、なんとかアレ撮れないもんでしょうか。うーんしかしどこに行ったら見れるんだろう。そんなときに相談できるのはそう、世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ「トト・ラボ」。
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釣りの達人・学習担当Kさん曰く「障害物があるからピョンと跳ねるわけじゃないですか~、だから堰堤とか、堰になってるとこですよ」。なるほどそりゃそうだ!膝ポン!Kさんいつもありがとうございます!レッツゴー!

というわけで早速、Kさんがアユの遡上を見たことがあるという揖斐川のポイントへ。おぉ~良い感じだ~~。とわくわくしながら双眼鏡片手に川を眺めていると、やはりその姿はやや異様だったのか、サツキマス釣りの方に「すみません、あの~さっきからなに見ておられるんですか?」と声をかけられました。実はアユの遡上を観察してて・・・と申し開きをするとなんだか非常に納得されたような感じで「あっ、ひょっとして国の方ですか?」。・・・・・・・・・国!
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いやいやアユの写真が撮りたくて、と理由を説明すると「もう少し上流の、根尾川揖斐川が合流するとこの堰だと毎年5月の中旬くらいにはピョンピョン跳ねてますよ!朝行っても昼行っても、一日中跳ねてます!」と教えて下さいました。ありがとうございます!レッツゴー!

日を置きまして。来ました、じゃん。ほほう、こちらもなかなか良い感じです。しばらく観察していると堰の下流の少しゆるい流れの水面を、稚アユたちがピョンピョン跳ねるのがちらほらと見られました。しかし飛ぶまでの間隔が長く、どこから飛び出すか予測がつかないため、とても撮影できる感じではありません。
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困ったな~と思っているとまたまた「アンタなにしてんの~?」と通りすがりの近所のご老人に声をかけられました。実はこれこれです、と説明すると、「あ~稚アユの写真撮りたいんなら『カイロウ』よ~。根尾川の方のね、こっから二個目の堰がいちばんいいよ~」とのアドバイスを頂きました。ありがとうございます!レッツゴー!

来ました。じゃん。本巣市海老・真大橋堰堤。
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2mくらいの落差がある堰堤を覗いてみますと、

うっわ!メッチャ飛んでる!動画でドーゾ!

この絶望的な高さの堰堤を超えようと、次から次へと水面に飛び出して来ます!


オワコマ渾身の一枚。
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一応ハイエンド機とはいえ、しょぼいコンデジでよく頑張った。

拡大してみましょう。
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口を引き結んだ凛々しい顔、紛れもなくアユです。河口から約30km、君たちこそよく頑張った。愛おしい。

堰堤の下のプール状になったところには、真っ黒には程遠いですが稚アユたちがたくさんたまっていました。ここ越えられないことがわかったら、ちゃんと本流の方に戻って行くんでしょうかね~。大喜びで写真撮ってましたけど、新聞なんかで良いニュースとして語られる記事に使われる写真の実際を見ると、なんだかだんだん気の毒な気がしてきました。こうして消耗しながらようやく中・上流に辿り着いても、先に上って成長したアユや体格の良い人工種苗のアユたちによさげな場所は占拠されていて、自然考いわく「まるで親子」状態になるんですね。「アユ(天然遡上)」も苦労が絶えないんだな~。

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ちなみにここでも近所の方に声をかけられました。ピークは10日くらい前だったそう。「今年はちっちゃいな~」と言っておられました。これくらいのアユでも毛鉤で釣れるんだそうです。この日はすでに根尾川ではアユ漁解禁過ぎていて、釣り人の姿もチラホラ。

このあとうちに帰ってテレビみてたら、三重県大内山川でアユ漁解禁、釣り人たちが釣果を競う「大物大賞」のニュースが。画面みてビックリ、なっなんと優勝したアユは20.3㎝だったそうな!ギョエー!水系は違えども、昼間ピンピンしてたちびっこアユを思い出してあまりのサイズの違いに度肝を抜かれました。そっ、そのアユひょっとして・・・・・・いえなんでもありません(汗)大山内川では越年アユも発見されてるそーです。

ひとくちに「天然アユ」と言っても一般消費者には思いも寄らないような「いろいろ」な事情があるんですねぇ。勉強になりました。

5~6月の長良川 2種類の鮎、まるで親子
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.101

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難易度:★★☆☆☆

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河口堰の魚道観察室は左岸にあります。見学時間は9:00~17:00。無料。独立行政法人水資源機構長良川河口堰管理所のHPではアユ遡上情報・魚道ライブ映像などがご覧になれます。根尾川の堰は本巣市海老・真大橋のすぐそばです。橋の下流300m程度のところから車で河畔まで進入できます。平服で観察OK。アユのジャンプは5月上旬から中旬がベストだそうです。川岸の修復工事中で一部立ち入り禁止の箇所もありますのでご注意下さい。なお堰の周囲は禁漁区になっていますので、観察だけにしましょう。