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「岐阜の自然考」をめぐる旅

見て知ることが第一歩。あふれだす身近な自然への愛情を18名の執筆者が語るエッセイ『岐阜の自然考』。その舞台をめぐる旅に出ます。

躍進の果て・タイワンリス

ある日、金華山のふもと(大釜登山道)を散策していると林の中から「ザザッ!」という音が。
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タイワンリス

 

デカイ!!
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子ネコぐらいの大きさあります。よく太ってるな~。ムササビかと思った・・・。金華山の、主に麓の辺りや梅林公園付近などで、タイワンリスよく見かけます。このときは2匹いました。写真撮れたの初めてです。ではせっかくなので今回のテーマは「タイワンリス」でいきましょう。

金華山でお手軽にタイワンリスを観察するならもちろんこちら「金華山リス村」。
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自然考によると「(金華山で野生化したタイワンリスの)一部を捕獲して、65年に金華山のリス村を開設した」そうな。リス村入口の看板にも、「金華山の野生リスをそのまま自然のなかで子供たちと遊ばせたいと願って、長い年月かけて調教して」とあります。リスも調教できるんですね・・・!ちなみに「調教」で画像検索すると正視に耐えない画像のオンパレードで、思わず指の隙間からガン見してしまいます。調教って言ったらオワコマのなかではまずもって「競走馬」なんだけどね。

入口のゲートをくぐると、わータイワンリスがいっぱいです。
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全然人を恐れません。所狭しと走り回っています。素早い!

ゲートで手袋をもらって中に入ると、係の人がエサをひとつかみ持たせてくれます。手のひらを見せると、
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あっという間にリスだらけ。

すごい勢いでペロペロ舐め取っていきます。
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このエサなんだろうと思ってちょっと舐めてみましたが、穀物?かナニカを曳いた粉のようでした。

タイミングよく手を持ち上げると、こんな風に乗ってくれます。
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手乗りリス。どうこれ格好のInstagramリア充・アピールポイントです。ガラケーだから関係無いけどね。1人だしね。。。

油断してると、肩や背中に飛び乗ってきます。汚れたら困る服はオススメしません。
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ところで上の、最初の写真の野生のタイワンリス、ここリス村のリスたちと比べるとメッチャ体格いいと思いません?もうほとんど別種のような。職員さんにズバリお聞きしたところ、「そうですね~この子たちの方がいいもの食べてるはずなんですけどね~・・・」と苦笑いされました。

しかしこのリスたち、カメラも全然恐れません。とても気さく。「タイワンリスは餌による誘引がしやすく、幼体から飼育すると人間に慣れる性質を持つ(自然考より)」そうです。
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見て見て前歯!ヌートリアと同じくオレンジ色の門歯です。ちなみに歯の数は20~22本。結構多いですね。

時折こんな風にブラン・・・とぶら下がってる個体を見かけます。
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これ、休憩してるんだって~。ヘンなの~。村内の解説板によると後肢の筋肉が発達しているリスにはこんな格好へっちゃらだし、下から来る敵を目で見張りつつ、立てたシッポで上から来る敵を察知できる合理的な休憩ポーズなんだそうな。ヘェ~。あと念のため言っときますけど休憩ってことばにいちいち反応しませんからねしとるがな

タイワンリスとニホンリスの決定的な違い。「体色は黄土色で、腹部はニホンリスの白色に対して、ほぼ同じ黄土色であること(自然考より)」だそうです。
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ほんとだー。おなかも同じ色。

ということはマスコットキャラのリロちゃん、キミは・・・・・・・・
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・・・・・・・・・。

あと「よく鳴き声を発する(自然考より)」のもタイワンリスの特徴とか。可愛らしい外見に似合わずビックリするような声を出すときあります。下記の動画(画像は静止画)からドーゾ。

ひょっとしたらこの声、金華山で聞いたことある方いらっしゃるかもしれませんね。実はわたしも「コレなんの音だろ~土産物の民芸品の音かな?」とかずっと思ってました。どんな民芸品だw この他にも「キッ!」という威嚇音とか猛禽類を見つけた時に仲間に知らせる声とか、何種類か使い分けてるそうです。

村内の小屋にある、リスたちのねぐら。
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リス村のリスは現在60匹ほどで、村内で出産・育児しているそうです。扉の奥が母子の部屋かな?

リス村の周囲はリスが逃げないよう、堅牢な「忍び返し」で厳重に囲ってあります。
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地震対策されているのか、台風なんかで外の木が倒れてきたら・・・とか思わないでもないですが。ちなみにタイワンリスはクリハラリスの台湾固有亜種の通称ですが、クリハラリスは特定外来生物です。2015年策定の岐阜市ブルーリストでは侵入ランクB。ヌートリアに負けてるやん。

さてこのタイワンリス金華山で野生化した経緯ですが、1936年(昭和11年)岐阜市で開催された「躍進日本大博覧会」の台湾館から逃げ出したものと言われています。
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さあここで取材終わったら他の行ってきたブログと大差ありません。ここからが自然考旅、「躍進日本大博覧会」についてちょっと掘り下げてみましょう。

というわけで、じゃん。岐阜県図書
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2Fに郷土史史料コーナーがあり、調べ物をしたいときは司書さんが親切に相談に乗ってくれます。結構お世話になってます^^

「躍進日本大博覧会」は1936年(昭和11年)、岐阜市の主催で行われた博覧会。岐阜公園と長良川畔一帯を会場として、52日間で総入場者数193万2千人という盛況ぶり。目玉展示は「テレビジョン実験」。この博覧会に際して発行された絵葉書が、岐阜県図書館に保管されてました。この絵葉書、県図書HPでも見られます。「人間大砲」とかありますね。愛知名古屋館のデザインがいい味出してますね、驚きの安定感ですね。帝冠様式・・・って言っていいのかなこれは。忠節用水(岐阜公園北側の水路)では鵜飼いの実演も行われたようです。昔はかなり水量あったんですね。
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記念絵葉書。図書館の人にお願いすると、別室で撮影させてもらえます。

水族館も、呼び物のひとつだったようです。「教育資料」と銘打ちながら、ちょ、人魚いません?
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大水槽での海女ショーが人気だったそうです。

そしてこちらが「台湾館」です。昭和11年当時、台湾は日本の統治下にありました。向こうに見える楼閣は、おそらく朝鮮館。
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この中で、タイワンリスの展示があったんですね~。つまり現在リス村にいるリス、そして金華山にいるおそらく全てのタイワンリスの祖先が、この写真の建物の中に全ているんだ!と思うとなんだか無駄にドキドキします。

岐阜市史の他、『大宮町一丁目史誌』(大宮町一丁目自治会,2000)にも博覧会の記述が見られました。この史誌、岐阜公園や金華山界隈の戦前・戦後の移り変わり、暮らしぶりが庶民目線で活写されていて非常に興味深いです。
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昭和の終わり頃、ロボット水門が改修によって姿を変え、「角の生えた鬼の様な姿に変身してしまいガッカリ」という驚きの記述がありました。ロボット水門にツノは無かっただとーーー!?!?!?この件に関しては追加取材決定だな。

おおっ、会場配置図発見(『岐阜県教育史 史料編 近代4』)。複写させてもらいました。一枚10円。
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うわっ、岐阜公園の前、市電が通ってる!そしてこれ長良橋渡ってるね!!知らんかった~。調べてみたらわたしがこちらに嫁ぐ1ヶ月前に岐阜市内の市電廃線になってる。結構最近まで現役だったのね。

それはさておき、絵葉書のなかの会場全景と配置図を比べてみると、恐らく台湾館はあのあたり。
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手前の長良橋は4代目(現在は5代目)で、位置が少し違うようです。橋の手前にいる黒い塊はひょっとして市電じゃない?!

Googleマップと配置図を重ねてみました。著作権的にこの画像どうなんだろうw
f:id:aquatottotoday:20160509170122j:plain台湾館は大体このあたり、御手洗池の西側のあたりでしょうか。

早速現地へGO。この東屋の付近に台湾館があったと思われます。
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木々が爽やかな木陰を作り、静かな公園内に当時の面影を残すものはなにも見当たりません。

博覧会終了後、このあたりでリスたちを「森へお帰り」したんでしょうかね~
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いやいや放逐したという記録はなく、どの記述を見ても「逃げ出した」という表現になってますね。けどメダカやコイ、ホタル、バスなど放流大好きの日本人を見ていると、「金華山の人気者になってね~♪」と積極的に放した可能性もあるのでは?と底意地の悪いオワコマは思ってしまいます。
博覧会って、科学や産業の先端技術を披露するのが重要な役割で、見物すると「ああ人類ってスゴいんだなー!」と感動しますよね。でもこうして振り返ってみれば「当時の最新科学知識」はどうしたってすでに過去のもの。生物多様性の重要性や外来種の脅威などが明らかになってくるのはまだずっと先です。日本に住んでいないものを野に放すことで何が起こるのか、そんな発想はなかったのでしょう。そしてひょっとして、今もね。

今では生息数が減っているのでは?と言われる金華山の野生化タイワンリス。異郷の地で逞しく生きる彼らの姿を見かけることがありましたら、人間と自然の関わり方はどうあるべきなのか、足を止めて少し考えてみるのも良いかもしれません♪

 

タイワンリス 金華山の「人気者」減少?
「岐阜の自然考 ふるさと ぎふの多様ないきものたち」P.111

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難易度:★☆☆☆☆

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金華山リス村は、金華山ロープウェー山頂駅すぐ。入村料は4歳以上200円。営業時間は年中無休の9:30~16:30(最終入場は16:15)ですが、リスの体調管理のため(たぶん餌やりでお腹いっぱいになったら)、途中1時間程度の休憩時間が差し挟まれる場合があります。休憩時間はリス村の前に掲示されていますのでご確認を。リスが肩に乗ってくる場合もありますので、汚れても良い服装でお出かけください。
岐阜市の郷土資料をお探しの場合は岐阜県図書館の他、岐阜市中央図書館(メディアコスモス)もオススメ。岐阜公園内の岐阜市歴史博物館内(中2階)図書室にもたくさんの郷土資料がありますが、こちらは司書の方が常駐しておられませんのでご注意。